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「そういえばおまえさん、髪を伸ばし始めたんだな」
東雲が出国の挨拶を続ける中、宿屋を経営していた時にフーリュン料理の材料を仕入れていた商人に、そんな事を言われた。
確かに今の東雲は月代を沿っておらず、髷を結ってはいない。
頭頂部も伸ばし、まとめていた髪を下ろしているため、一見して急に髪が伸びているように見えるのだ。
「ああ、少し事情があってな。
それに、今の世で月代を剃っておるムロマチ人の方が珍しかろう」
「ま、そりゃそうだ」
このフーリュン人、東雲とはよく語らっているのだが、奇妙な事にお互いがお互いの名前を知らなかった。
東雲はフーリュンの商人、と呼べば事足りるし、商人の方も宿屋の旦那、と呼んでいたからだ。
尋常の商売では、失格の烙印を押される行動なのだろうが、東雲のように好んで名を広めようと思わない人間にとってみれば、煩わしくなくてよいという部分もあった。
商人もその点を大分心得ているようで、踏み込んでくる事は少ないし、そういった少し外れた人間相手の商品も仕入れている。
「しかし、おまえさんが国を出るとお得意さんが減るなぁ」
「真っ当にいけば、フーリュンを売りにしている店などそこかしこにあるだろうに」
そういうと商人は妙なしかめっ面をして
「ムロマチのキョウ商人が、すぐさまエド商人に受け入れられると思うか?」
フーリュンという国は狭いようで広い。
地区ごとの特色が多く出てもいる。
確かに、東雲のような典型的ムロマチ人でも、キョウ出身のものがエドの縄張りにほいほいと入り込んでいっては良い顔をされないだろう。
だからこそ妖者術(変装術)が重要となるのだから、東雲としても商人の言葉には失念していたと頷かざるをえない。
「ま、後は別の商売でも考えるさ。
戻ってきたとき、俺がいるかどうかはわからないが、いたとしたらまたご贔屓に頼むぜ」
「お前こそ、たまには大衆受けするような代物を仕入れていたらどうだ。
この国で花椒の実をもってきてどれだけ売れるというのだ」
その言葉に商人は大笑いして答えず、東雲もそれ以上追求はせずに、次に行く国の評価を聞くことにした。
東雲も商人も、薄々と気づいてはいたが、この二人、国も呼び名も違えど、どちらもその国の言葉で忍び、またはスパイといわれる存在であった。
後に、東雲は出国しても名も知らぬ商人に対して、まるで尋ね人宛のように手紙を出し合う関係になるのだから、奇妙な友誼があるものだと、恋人には笑われることとなった。
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